特定技能の外国人、地方定着へ支援 厚労省

日本経済新聞引用

厚生労働省は、4月に導入された新しい在留資格「特定技能」を取得した外国人の地方での定着を支援する。中小企業の求人情報を海外で発信、労務管理への助言や外国人の生活支援に当たる。技能実習生と異なり、転職が自由な特定技能の外国人が、賃金が相対的に高い都市部に集中しすぎるのを防ぐ狙いだ。

特定技能は介護や外食、農業など14業種が対象。技能と日本語能力の試験に合格することなどによって取得できる。厚労省は2020年度、全国5つ程度のモデル地域を選定し、特定技能の外国人の定着支援に乗り出す。同年度予算の概算要求に8億5千万円を盛り込んだ。成果を検証し、取り組みを全国に広げる。

公共職業安定所(ハローワーク)が地方の中小企業の求人情報を海外で紹介、外国人とマッチングする。フィリピンなど特定技能の資格試験を実施する国が対象となる。

外国人の来日後は、雇用契約書や安全管理マニュアルの翻訳など適切な労務管理ができているか、各地の労働局の職員が現場を回って助言する。各自治体も外国人の生活支援に取り組む。公営住宅や空き家を住居としてあっせんすることなどを想定している。

技能実習制度は働きながら技能を身につけるという本来の趣旨がありつつ、通常の就業ビザでは禁じられている単純労働の担い手確保に利用されていると批判を浴びた。

こうした背景から新たな枠組みとして、特定技能制度が始まった経緯がある。技能実習と異なり、特定技能制度の資格を持つ外国人は日本での就労が認められている業種の枠内で転職が自由だ。

このため、人材として育成してもすぐ別の企業に転職することへの懸念を示す企業もある。特に地方は「雇用した外国人が、高賃金の都市部に移るのではとの不安を抱く経営者が少なくない」(厚労省担当者)という。

外国人の受け入れに詳しい山脇康嗣弁護士によると、特定技能の資格を目指す人材を送り出す海外の養成機関から、日本語習得などの教育費用の一部を求められる場合もある。山脇弁護士は「技能実習生の場合には不要だったコストを企業が負担することも想定される。地方の中小企業の金銭的な負担を軽減する支援策も検討すべきだ」と指摘している。
日本経済新聞社記事