令和5年版厚生労働白書から考える政府の取り組みと私たちにできること


近年、日本の合計特殊出生率は低下傾向にあり、少子化が深刻化しています。
現在の傾向が続けば、2070年には人口が8700万人に減少し、生まれる子どもの数は約50万人、高齢化率は約39%に達すると予測されています。
こうした状況を改善するため、政府は様々な対策を講じていますが、課題も残されています。
政府の取り組み政府は、子ども・子育て支援と仕事と家庭の両立支援の二つの柱を中心に、少子化対策を進めています。

一つ目の柱:子ども・子育て支援

2015年に施行された子ども・子育て支援新制度では、幼児教育・保育・地域の子育て支援を総合的に推進しています。

具体的には、施設型給付と地域型保育給付の施策、認定こども園制度の改善、地域の実情に応じた子ども・子育て支援を実施しています。
そしてこども家庭庁の設置です。2023年4月に発足したこども家庭庁は、子ども政策の司令塔として、子ども・子育て支援を更に充実させていく予定です。

二つ目の柱:仕事と家庭の両立支援

男女ともに育児・介護をしながら働き続けられる環境整備を目指し、育児・介護休業法に基づき、育児・介護休業法の制度を設けています。
また企業における次世代育成支援の取り組みでは次世代育成支援対策推進法に基づき、企業は、行動計画の策定・届出、男性の育児休業取得促進、職場復帰支援の取り組みを実施することが義務付けられています。

適切な行動計画を策定・実施し、その目標を達成した企業は「子育てサポート企業」としてくるみん認定を受けることができます。

この認定制度は、男性の育児休業取得率の向上や不妊治療と仕事の両立を進める企業を支援するためのもので、認定企業は公共調達における加点評価の対象ともなります。
育児休業取得や職場復帰支援など、仕事と家庭の両立支援に取り組む中小企業事業主に対して、助成金が支給されます。

更なる課題とは?


政府の取り組みにもかかわらず、少子化対策には依然として課題が残されています。
一つ目は子育て支援サービスの不足です。待機児童問題や保育士不足など、子育て支援サービスの不足が課題となっています。
二つ目は男性の育児休業取得率の低さです。2021年度の男性の育児休業取得率は13.97%にとどまっており、更なる向上が必要です。
三つ目は企業における両立支援の格差です。企業規模や業種によって、両立支援の取り組みには格差があります。大企業と比べて中小企業は、制度や体制が整っていないケースが多く、両立支援に取り組むための負担も大きいという課題があります。
四つ目は社会全体の意識改革です。子育ては夫婦共同で取り組むべきものという意識がまだ十分に浸透していないという現実です。

更なる課題についての解決策

少子化対策は、政府だけでなく、企業や個人の協働によって取り組んでいくことが重要です。
そこで、政府は、こども家庭庁を中心に、子ども・子育て支援を更に充実させていく予定です。
子育て支援サービスの充実では待機児童問題や保育士不足などの課題を解決するため、待機児童解消に向けた保育所の整備、保育士の待遇改善による人材確保、ベビーシッターや一時保育などの多様な子育て支援サービスの提供の取り組みを進めています。


男性の育児休業取得を促進するための対策としては子どもの出生後8週間以内に4週間まで取得できる産後パパ育休制度、男性の育児休業取得を促進するための職場環境づくりの取り組みを進めています。


企業における両立支援の推進では、企業における両立支援の格差を解消するため、中小企業が両立支援に取り組みやすくするための助成金やテレワークやフレックスタイム制等の導入促進、多様な働き方を可能にする制度の導入促進、そして企業の取り組み事例の共有の取り組みを進めています。
両立支援に積極的に取り組んでいる企業の事例や指標を掲載したサイト「両立支援ひろば」による情報提供を行っています。


最後に社会全体の意識改革です。子育ては夫婦共同で取り組むべきものという意識を醸成するため、啓発活動の取り組みを進めています。
具体的には男性の育児参加の重要性に関する啓発活動、父親の育児参加を促進する制度、父親の育児参加を促進する制度の導入などです。これらの活動についての事例も「両立支援ひろば」で共有できます。

まとめ

私たちの前には確かに大きな課題があります。
しかし、政府、企業、そして一人ひとりが力を合わせれば、子どもを産み育てやすい社会を実現することは決して夢ではありません。
今日ご紹介したように、すでに多くの取り組みが始まっており、私たちの行動一つ一つが、未来を変える力になります。
少子化対策は、ただ政策を待つだけではなく、私たちの生活の中でできる小さな変化から始めることができます。

しかし、『具体的に何をすればいいのか?』と疑問に感じる方もいるかもしれません。

次回は、両立支援の格差を解消し、中小企業でも両立支援に取り組みやすくするための助成金、多様な働き方を支援する制度、そして実際の企業の取り組み事例を詳しく解説します。

これらの情報が、皆さんの行動を後押しするヒントになることでしょう。